入学希望のみなさまへ
~ 経験と勘の呪縛からの脱却 ~
皆さんは,野球を見ますか?どうしても1点が欲しいとき,ノーアウトランナー1塁の場面で,送りバントという作戦をとることが多いことは,よく知られています。いわゆるそれが,セオリーと呼ばれるものだからです。
しかし,得点できる確率は,ほとんど変わらず,期待得点(その作戦をとったときに平均して何点入るか)はむしろ下がるという統計があるのはご存じでしょうか?これは送りバントできる確率が100%ではない(プロ野球でも7割程度)のに加えて,送りバントはアウトカウントを一つ増やすことが原因です。日本の野球でセオリーと言われることが,確率を考えると必ずしも正しくない一つの事例です。亡くなった野村克也さんは,ヤクルト監督時代,ID野球(データ重視野球)をかかげ,ヤクルトを強いチームに育て上げました。また,米国オークランドアスレティックスというメジャーリーグチームがセイバーメトリクス(野球統計学)を活用して,低予算で強いチームを作り上げたというストーリーが「マネーボール」という映画で話題になりました。このセイバーメトリクスは,現在では日本のプロ野球チームの編成にも大きな影響を与えています。いずれの事例も,それまでの経験と勘に頼らない科学的手法の導入が大きな特徴になっています。
これは野球だけの話ではありません。それまで培ってきた人間の経験や勘にもとづいて作られてきたセオリーを疑うことは,とても大切なことなのです。AIが人間の知識を凌駕し,時として,将棋の名人にも勝つことができるようになったということも聞いたことがあるのではないかと思います。これも,経験や勘に基づいた手にとらわれず,より効果的な手の探索をAIがするからに他なりません。
私の担当する「定量分析とその応用」や「経営科学」は,人間の経験や勘に基づいた意思決定から脱却するための科学的アプローチとして共通しています。前者は統計学,後者は数学モデルという道具を使うという違いがあるだけです。もう一つの「経営情報システム」は,コンピュータを企業経営において,どのように活用するかが主たるテーマの学問でありますが,この分野においても,経営者による経験や勘に基づいた意思決定から脱却ということが重要なテーマとなっています。ビッグデータやIoTの活用は,まさにそれがテーマになのです。
常識を疑い,経験や勘の呪縛から脱却できるようになるためには,科学的アプローチを活用するための基礎能力が不可欠です。ここで,そのような学習をしてみませんか?